ひどい痛みにもかかわらず、決定的な治療法がない四十肩・五十肩。
20年にわたる整体を通じて得た知見をご紹介します。
そもそも「四十肩・五十肩」の定義って?
実は「四十肩・五十肩」という呼び名は、西洋医学の正式な病名ではなく俗称・通称です。
病院では「肩関節周囲炎」と診断されることが多いようです。
似たような痛みでも別の病気のケースもあるので自己判断は禁物。
念のため医療機関でちゃんと検査を受けましょう。
以下は「四十肩・五十肩」が悪化した際の症状です。
- 腕を挙げる動作がつらい。(髪の毛を洗う・歯ブラシを持つ・着替えで袖を通す)
- 腕が後ろに回らない。
- 寝る時に「腕の置き場」に困る。
- 肩の痛みで眠れない。
- 肩から腕がだるくて痛い。
「肩こり」がなくても起こる!
「肩が痛くて動かせない」という話を聞くと
「肩こりを我慢して、ひどくなったんだろうな」
と思うかもしれませんが、
「肩こり」がなくても、四十肩・五十肩になります!
(普通に生活していて、肩が全く凝ってない人は珍しいですが…)
もちろん肩こりがひどくなって「腕が挙げづらい」ケースもあります。
しかしそれは一時的な話で、休養を取れば回復するはずです。
本当の四十肩・五十肩だと、養生しても痛みがほとんど変わりません。
四十肩・五十肩の進行過程
多くの四十肩・五十肩は、似たような経過をたどります。
① 前兆
何の前兆もなく「目覚めたら発症していた」という人もいる一方で、前日に「何となく肩が重たい」といった違和感を感じていた人もいます。
普段とは異なる「肩の違和感」を感じた場合は、ちょっと気を付けた方がいいでしょう。
その日のうちに整体を受けていただくことが理想です。
それが無理なら「軽い全身の体操やストレッチ」をしてから寝るようにすると、翌朝の最悪の事態を防げるかもしれません。
② 痛み
ハッキリとした自覚症状が始まるのは、朝イチが多いようです。
眠っている間は動きが少なく、筋肉が硬直しがちです。
寝ている間の身体の硬直がダメ押しとなって、起きた時に明確な痛みとなって現れるのでしょう。
このタイミングで初動を間違えなければ、早く痛みがおさまります。
痛みが出た当日に来院された方で、初回でほぼ痛みが消失し、翌日の2回目の施療で完全に回復された例もあります。
③ 可動域の悪化
四十肩・五十肩が「激痛」で始まらないケースもあります。
この場合、徐々に可動域が狭くなり、痛みもだんだんひどくなるという、緩やかな経過をたどります。
痛みを我慢しつつ、「五十肩に効く体操・ストレッチ」を実践する方もいます。
でも正直なところ、悪化を遅らせるのが精一杯で、回復まで至ることは少ないようです。
「鍛えれば治る」と勘違いして、トレーニングのようにやりすぎると逆に悪くなるので要注意です。
④ 痛みの収束
病院へ行かずに放置していても、数か月~1年ぐらいで痛みはほぼ治まるようです。
病院で「原因不明」と診断された場合も同じですが、きちんと原因に対処していないと「痛みが治まっても、従来ほど腕が動かなくなる」状態に落ち着いてしまいます。
痛みはなくなったけど、綺麗に手が挙がらない。
これでは「治った」とは言えません。
⑤ 逆側への転移
「やっと四十肩・五十肩が治った」と思ったタイミングで、反対側の肩に発症する方も結構います。
まるで痛みが「右から左へと移った」ようにです。
この場合、痛みが消失しかかっていただけで、治りかけていたわけではありません。
肩が拘縮し切ると疼痛のピークは過ぎますが、今度は「肩の拘縮」が災いして、次の身体の痛みを引き起こします。
「反対側が四十肩・五十肩になる」以外に、「腰痛」や「膝の痛み」として出る場合も多いです。
人体は筋肉・骨格を通じて上下左右に影響しあっています。
「従来の四十肩・五十肩の箇所が、反対側の肩にまで悪影響を及ぼし始めた」と考えるのが妥当です。
お薦めしない治療法
患部や周辺をもみほぐす。
痛みを我慢して無理に肩関節を動かす。
四十肩・五十肩の施療方針
着眼点① 肩関節を構成する骨の位置関係
解剖学の本を読んでも、肩関節にまつわる内容はボリューム満点です。
要はそれだけ複雑な構造になっているのです。
腕は前後・上下・左右いろいろな方向へ動かすことができます。
これは肩関節が「とても複雑な構造」になっているから実現できているのです。
肩関節に限ったことではありませんが、関節の中で骨が本来の位置からズレてくると、可動域が狭くなったり、動いた際に痛みが出たりします。
「関節のかみ合わせが悪い」状態です。(間接の不整合)
四十肩・五十肩の多くは、「巻き肩」など体の歪みを抱えています。
身体が歪むことで骨の位置関係がおかしくなり、だんだんと「関節のかみ合わせ」が悪くなります。
「関節のかみ合わせ」が悪い状態は、「自然体で関節技が決まっている」ようなものです。
四十肩・五十肩の本当の原因は「肩関節を構成する骨同士の位置関係のズレ(肩関節の不整合)」です。
位置関係を正常な状態に戻すには、肩周辺だけ施療するのでは間に合いません。
着眼点② 肩関節に関連する筋群の硬直
関節を構成する筋肉が凝り固まっている状態では、当然スムースに動きません。
四十肩・五十肩の筋肉硬直は普通の肩こりと異なり、もっと広範囲な筋肉と関連しています。
ですから「肩」にとらわれず、「肩の筋肉をほぐすために腰もほぐす」といったような俯瞰的な施療を行っていきます。
[st-kaiwa1]Q. 「肩こりと四十肩・五十肩は違うのですか?」[/st-kaiwa1] [st-kaiwa2]A. 「根本の原因が違います。初期の四十肩・五十肩だと『最近肩こりが特にひどいなぁ…』と勘違いされるケースも多いですね。普通の肩こりと違って、休養を取っても肩の違和感がなかなか取れない場合は、四十肩・五十肩の前兆を疑った方がいいかもしれません。『何か肩に嫌な違和感があるなぁ』と思っていたら翌朝ものすごい激痛で腕が自由に動かなくなっていた例が複数ありますので、気になる場合は早めに処置されることをお薦めします。」[/st-kaiwa2] [st-kaiwa1]Q.「肩こりがひどくなくても四十肩・五十肩にはなりますか?」[/st-kaiwa1] [st-kaiwa2]A.「可能性はあります。身体の歪みがひどいと、肩の筋肉が柔らかくても四十肩・五十肩の状態になります。肩の筋肉が比較的やわらかいのに四十肩・五十肩の症状で来られた例もあります。」[/st-kaiwa2] [st-kaiwa1]Q.「四十肩・五十肩は半年ぐらい我慢すれば自然治癒すると聞いたのですが」[/st-kaiwa1] [st-kaiwa2]A.「痛みに関しては半年ぐらいで落ち着く場合が多いようですね。ただし痛みがなくなるのと治るのを混同されないように気を付けて下さい。よくある例が『我慢していたら半年ぐらいで痛みは治まったけど、それ以来、腕が挙げにくいまま…』というケースです。痛みが治まっても、腕が元通り挙がらないのでは治ったとは言えませんよね。それ以上に怖いのが「痛みが治まりかけた頃に、反対側の肩が同じような激痛に襲われるケース」です。これも話を伺っていると結構な数の経験者がいらっしゃいます。痛みの有無にかかわらず、体のゆがみを放っておくことはとてもリスクが高いことなのです。」[/st-kaiwa2]四十肩・五十肩に似ているけど違う症状
腕を動かした際に肩の周辺が痛いと、とりあえず「四十肩・五十肩」と考えがちですが、違う症状のケースもあります。
- 石灰付着性腱板炎(石灰性腱炎)
- 腱板断裂
これらの症状は四十肩・五十肩と似たような痛みが起こりますが、痛み自体の原因が別にあります。まずは整形外科で検査してもらいましょう。
石灰付着性腱板炎(石灰性腱炎)
石灰付着性腱板炎(石灰性腱炎)とは、体内でできた異物(結晶)が肩の関節に入り込んでしまい、それによって関節の「腱板」と呼ばれる部分が炎症を起こしている状態です。
- 40~50代の女性に多い
- 肩を動かすと痛い・可動域が狭くなる
ここでいう石灰とは「リン酸カルシウム」のことで、骨を形成する主な物質です。
できた石灰は最初「ミルク状」で柔らかいのですが、時間経過とともに「練り歯磨き状」になり、最終的には「石膏(せっこう)状」へと固くなっていきます。
病院での治療として、「ミルク状」の段階では針を刺してこの異物を吸引する、固くなっている場合は手術で摘出する方法が多いそうです。
腱板断裂
腱板とは腱板筋という4つの筋肉(肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)の総称です。
腱板断裂とはこれらの筋肉に傷がつき、痛みが出ている状態のことです。
傷がつく原因は外傷や仕事での酷使はもちろん、他にもいろいろあるそうです。
発症は40代の男性に多いようです。
断裂した部分は自然に治ることはありません。
治療法としては多少断裂していても手術はせず、リハビリなどで症状を軽くすることや注射による治療がメインとなるようです。
あまりにひどいと、手術して断裂した部分を縫合するケースもあるようです。
四十肩・五十肩は「肩こり」の延長ではない
四十肩・五十肩と聞くと、
- 肩こりをこじらせると、四十肩・五十肩になる。
- 40代・50代の年齢に起こりやすい病気。
といったイメージをお持ちではありませんか?
しかし色々な例をみていると、「本当にそうなのかな?」と疑問に感じます。
①肩こりをこじらせると、四十肩・五十肩になる?
肩こりがひどくなると四十肩・五十肩になるのであれば、四十肩・五十肩の人はみんな「肩がカチカチ・パンパン」なはずです。
確かにそういう方もいます。
でも実際に四十肩・五十肩で来られる方は、そこまで肩がカチカチではありません。
逆にカチカチのひどい肩こりの人でも、腕の挙上などに全く支障がない方もたくさんいます。
そうなると「肩こりがひどくなると、四十肩・五十肩になるわけではない」と解釈するのが妥当です。
このような理由から、「肩さえほぐせば、四十肩・五十肩はよくなる」という考え方には賛同できません。
②40代・50代の年齢に起こりやすい病気?
若い方が四十肩・五十肩になると、病名の由来にショックを受けられるようです。
しかし、実例をみていると年齢はあまり関係ないようです。
30代以前でも、60代以降でも、四十肩・五十肩の状態になる方はたくさんいます。